卵不足の裏側に。

環境を整える

みなさんは普段、卵を食べますか?

ここ数か月で、卵の価格が急騰しています。みなさんの地域のスーパーでも、従来通りの値段で売られなくなったのではないか?と思います。

その主な原因として挙げられるのは、『鳥インフルエンザ』です。

この報道が、新聞やテレビのニュースなどでも取り沙汰されていますね。

2023年2月26日付の『東洋経済ONLINE』での報道の一部を、抜粋します。

〈鳥インフルで卵価格2倍に、調達難で外食が悲鳴〉

今シーズンはこれまでで最も早い10月末から被害が拡大。感染の発生件数は

2月20日時点で76件に上り、鶏卵を産む採卵鶏1300万羽以上が殺処分された。

平時に国内で飼育されている採卵鶏の1割に相当する規模で、従来最も多かった

2020年度の987万羽を大きく上回った。

鳥インフルエンザの蔓延によって、外食産業の卵を使用したメニューが変更、中止のお知らせが相次いでいるのも報道されています。以前は、10個入りの卵1パック105円で売られていた私の近所のスーパーも、今では200円を切らなくなりました。

『卵が高くなって、家計に厳しくなった』

『ファミレスで、大好きだった天津飯が看板メニューから消えている』

『大好きなコンビニエンスストアの卵サンドの量が減ったらしい』

こういった声が聞こえてくる背景として、どれほど卵が食卓を支えていたか、身近な食材だったかが強く感じられます。

そして、一歩先、卵を産むニワトリについて想いを馳せてみることで、現代社会の食糧生産の課題が浮き彫りになってきます。

それは、大量生産・大量消費が前提の食糧生産現場に『命』の扱われ方がどのようなものか一考の価値がある、ということです。

畜産の世界では、家畜がより良い生き方ができるような取り組みをするという考え方で、『アニマルウェルフェア』というものがあります。

これは『動物福祉』と訳されており、イギリスで提起された以下の5つの自由が基本になっています。

①飢え、渇き、栄養不良からの自由

②恐怖と絶望からの自由

③肉体的な、そして温度上の不快感からの自由

④痛み、傷害、病気からの自由

⑤正常な行動を発現する自由

これはつまり、これまでの生産過程において、動物たちがぞんざいに扱われ、上記の5つの自由が許さない飼育環境にあったということに繋がります。

戦後の日本では大きな経済改革が行われ、大量生産・大量消費な経済社会で国力を潤沢にしていくことが優先された風潮がありました。その中で、畜産業も『効率化』した技術やシステムが発達しました。

例えば、鶏の産卵において、鶏舎の窓をなくし、照明や換気を人工的に行うことで、効率的に産卵させる『ウインドウレス鶏舎』という飼育方法があります。鶏たちは、ケージの中に数羽ずつ入れられ、太陽の光を浴びることなく、自由に走り回ることなく、生涯卵を産み続けます。

さて、健康の3本柱に、『食事・休息・運動』があります。

私たちは、栄養を摂り、ゆっくり休み、適度な運動をすることで健康増進を図っています。

これを養鶏場の鶏に置き換えると、ケージ飼いの飼育方法で飼われる鶏たちは運動不足で、免疫力が下がります。そして狭い鶏舎に密集して飼育されることから、例えばその養鶏場で1羽、鳥インフルエンザの感染が確認されると、その養鶏場全体の鶏への感染リスクや、ウイルス自体の進化、鳥から人への感染リスク・パンデミックが懸念され、全ての鶏の殺処分が行なわれることになるのです。

では、私たち消費者は、今ある自体に何が出来るのでしょうか。

いろんな方法がある中で、まず出来ることは、『さまざまな動植物の命を頂いて生きている』、ということに改めて思いを馳せ、『いただきます』『ごちそうさま』を大事にする食卓を作っていくことが挙げられます。

卵1つにとっても、私たちの手元に届くまで、たくさんの関わりがあることは想像に難くありません。食事をすることを単なる行為ではなく、生きていくための営みとして、丁寧に食事を楽しみたいものです。

また、今回の鳥インフルエンザの蔓延を受けて、私たち消費者が、鶏のアニマルウェルフェアが実現されている『平飼い』『放し飼い』の飼育をする養鶏場の卵を選択することも1つです。

ケージ飼いの方法で採卵するよりもコストがかかるため、価格としては多少高価ではあります。しかし、健康的な鶏の卵は、良質なものであり、イギリスでは既に、自身の健康への関心や、アニマルウェルフェアに関心を寄せる人に支持されています。

消費者の選択が少しずつ変化して、安し良し、ではなく安くても健康に良くない食品は、敬遠されるようになっていった先には、不健康な飼育がなされた大量生産型の食品よりも、多少高くても安全な食品を買うことが主流になっていくことが考えられます。

そうすると、販売する側も飼育する側も動物の飼育環境の整備に力を入れるようになるでしょう。こうして、良い消費者が良い生産者につながり、動物の福祉や健全な飼育環境を支えるとも考えられます。

エシカル消費は、私たち人間の健康にはもちろん、動物にも地球にも優しくなれる仕組みがあります。そうして心豊かな社会を育むことで、サステナブルな生産・消費を心掛けてみませんか。

今日もお読みいただきまして、ありがとうございました♪

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